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2024年度

2024.9.20 書籍「相関分光法」発刊

日本分光学会の出版委員を務めている関係で、 分光法シリーズにおいて新たな書籍の企画を立ち上げさせていただきました。
この度、計画から約4年の時を経て、書籍「相関分光法」が発刊となりました。
私は動的光散乱法に関する節の執筆、および全体の編集に携わらせていただきました。
本書の第2章は、私の専門の動的光散乱に加えて、関連する技術であるX線光子相関分光法および蛍光相関分光法についてまとめています。
第3章および第4章では、二次元での相関分光をまとめていただきました。
これは、学会発表などで「二次元IR」と呼ばれている研究を聞いたところ、
呼称が同じだけで似ても似つかぬ内容が表れて困惑した昔の自分の経験が基になっています。
学生時代の私は、「二次元IR」というと「二次元赤外分光法」(本書の4章)のことだと思い込んでいたのですが、
今思うと、赤外吸収スペクトルの解析で「二次元相関分光法」(本書の3章)を使っている場合も慣習的に「二次元IR」と呼ばれていたようでした。
その他の特徴的な点として、多次元分光を理解するために、最も古くからある二次元分光である二次元NMRについても解説していただきました。
学生時代の自分が欲しかった内容が書籍になっています。
少しでも興味を持った方は、ぜひお買い求めください。

2024.9.11 解説「非弾性散乱法を利用したゆらぎ計測による構造化学」

昨年、第16回分子科学会奨励賞をいただいた関係で、解説 「非弾性散乱法を利用したゆらぎ計測による構造化学」 を執筆させていただきました。
オープンアクセスで、誰でも読める形となっています。
最近は動的光散乱のお話をすることが多いのですが、
私の研究の原点は分子分光でして、
今回は分子分光と動的光散乱を如何に融合したかについて、自由に書かせていただきました。
参考文献にこのサイトも引用したので、しばらくは大人しいサイトにします。

2024.7.10 オフラインのPCのディスプレイをZoomで流す

大学院の授業で、ラマンやDLSを測定している様子を見せたいと考えました。
現在私の研究室に組んでいる装置では、標準物質を相手にすれば、
ラマンは0.1 s、DLSは1 sで、そこそこのデータが取れます。
…と言葉で説明するより、測定する様子をリアルタイムで見せた方がワクワクするかな、ということです。
ですが、普段データを取るために使うPCは、インターネットから完全に遮断しています。

昔、長時間測定中に勝手にアップデートを始めて測定を止められて以来、測定用PCには外の世界を教えていません。
ということで、ZoomでオフラインのPCによる測定の様子を流すにはどうすればよいかを考えました。

案1:画面を撮影して流す
→創意工夫のないローテクだな、ということで却下。

案2:測定の様子を録画して流す
→やっぱりライブ感は大事でしょう、ということで却下。

案3:ゲーム配信みたいな感じにする
キャプチャ―ボードのつなぎ方
ゲーム配信でキャプチャ―ボードが使われているということは聞いたことがあったので、真面目に調べました。
キャプチャ―ボードは、ケーブルを通じて流れる映像を途中で盗むような装置です。
ゲームやテレビの映像をパソコンに落とすために使うのが一般的なようですが、
(オフラインの)パソコンの映像を(オンラインの)パソコンに落とす用途にも使えます。
図のようにつないであげて、キャプチャーした映像をZoomを介して配信しました。
使ったキャプチャ―ボードはGV-USB3HDS/Eです。
特に強い決め手はないですが、知っているメーカーの中で比較的安価だったのでこれにしました。
こんな感じで授業で使ってみましたが、遅延はほぼなく、とてもスムーズに使うことができました。
Zoomの録画動画で見返すとなんてことないんですが、授業時間中にライブでやったということを意識して見ていただきたい…!
ちなみに、実験室の様子を見せる際には、iPadからもZoomに入って、iPad経由で映像を共有しました。
今後、実験映像をライブ配信したい方は、どうぞ。
実験の様子を外部からモニターするような用途にも使えるなと思いました。

2024.5.1, 6.15 特許登録

あまりこの雑談ページを更新していませんでした。
前職のNIMS時代に申請した特許が一気に2つ登録されました。
初めてだったのですが、特許取得の流れを知ることができて良かったです。
今後も何か発明したいと考えています。
特許にしたいことはたくさんありますが、ここで書くと特許にできないので、
特許にしたいことはたくさんありますが、泣く泣く秘密にします。
特許にしたいことはたくさんありますが。

2023年度

2024.1.30 レオメーターの導入

今後の研究に向けて、レオメーターを導入しました(Anton Paar, MCR 302e)。
これで、ソフトマテリアルのマクロな物性を測定することができます。
液体試料の場合は粘度、柔らかい固体の場合は粘弾性を測定することができます。
透明な回転治具も合わせて用意したので、
粘弾性測定をしながらの光学測定にも取り組みたいと考えています。

レオメーター試運転
粘度約106 mPa sのシリコーンオイルの粘度および粘弾性測定結果。
実物はオイルというよりワックスみたいです。
レオメーターのご尊顔
ピッカピカのレオメーター。かわいい。

2023.12.26 空間位相変調器を用いたテクしばくんのホログラフィー作成

今後の研究に向けて、空間位相変調器(Spatial Light Modulator; SLM)を購入しました(Santec, SLM-200)。
散乱研究に用いる予定ですが、その前に動作チェックをしてみました。

使っているSLMは、1920 × 1200 pxの画素で構成されており、
パソコンにディスプレイとして接続することによって様々な画像を位相変化として書き出すことができます。
ここでは例として、2023年11月に工学部から大学全体のマスコットキャラクターへと昇進した、
本学のマスコットキャラクター、テクしばくんの画像を光によって描いてみます。

光学系は図に示した通りです。
532 nmのレーザー光のビーム径をレンズ2枚で拡大した上で、
少しだけ角度をつけたSLMに照射しています。

ホログラフィー作成の光学系
まだガラ空きの光学定盤を大胆に使っています。

肝心なのはSLMに表示する位相変化の画像です。
ただ、これについてはSantecから提供されているソフトウェアを使うと容易に作ることができます。
例えばレンズと同等の効果をSLMで実現するためには、
レンズの曲面を真似た位相差を出す必要があります。
通常のレンズは大きく曲がった曲面がありますが、
SLMの場合は0–2πの範囲で位相差を実現するため、
イメージとしては中心から離れるにつれて激しいギザギザを持つ面になります。

f=500 mmのレンズの計算機ホログラム
f = 500 mmのレンズを実現するSLMの位相変化。
レンズは等位相面の間隔がどんどん狭くなっていきます。
光からすると、位相が360° (2π)ズレたところで何も変化はありません。
ということで、一般的なSLMの位相変調は0–2πの範囲 (1波長分)となっています。
断面図はギザギザでレンズ感がありませんが、
不連続に位相が変化しているところをうまい具合に2πずらしてあげると、
レンズらしい断面になります。
なお、SLMは物理的に表面がギザギザになるわけではなく、
液晶の配向を制御することによって光学的に遅延をかけて位相差を作ります。
物理的に表面がギザギザになる光学素子はDeformable mirrorと呼ばれ、
一般に高精度・高速の動作が可能ですが、素子数が少ないしSLMより高かったので、
当研究室ではSLMを使っています。

こんな感じの計算を頑張ってやってもらうと、任意の波面、画像を投影することができます。
元々、画像を投影するには、映したい画像を基に光を使って波面を記録して、
その記録された波面に対して光を当てるという、記録・再生の二工程が必要でした。
この技術はホログラフィーと呼ばれています。
本実験では、ホログラフィーにおける記録の工程を計算で代替し、SLMで適切な波面を整形しています。
ということで、計算された波面は計算機ホログラムと呼ばれています。
ただ遊んでいるだけですが、もちろんこれを使ってこれからちゃんと研究もします。

計算機ホログラムになったテクしばくん
濃淡の表現はうまくできないので、テクしばくんを二階調化して計算機ホログラムにしました。
眉毛の+と-、お腹の「工」の文字(工学の工)、スパナの尻尾が見えます。
オフィシャルなテクしばくん はこの2パターンです。
緑色のレーザーを持っていたのは、偶然ではなく運命です。
画像をそのまま計算機ホログラムにしたものは、無限遠方で結像します。
左の写真は、6 mくらい飛ばして部屋のドアに投影したものです。
先述した光学系のように光学定盤上のスクリーンに結像させるためには(右の写真)、
テクしばくんの計算機ホログラムに結像位置までのレンズに対応する計算機ホログラムを足し合わせます。
計算機ホログラムにもそこはかとなくレンズの同心円感が見えます。
なお、どちらの画像にも鼻のあたりに光が見えていますが、これは反射光です。
60 Hzで動かせるので、いつかテクしばくんのアニメができたら、これで投影します。
ミッキーマウス1.0のパブリックドメイン化がすぐなので、蒸気船ウィリーくらいは流せる…?

2023.10.3 ノーベル物理学賞について

今年のノーベル物理学賞の受賞テーマは、
for experimental methods that generate attosecond pulses of light
for the study of electron dynamics in matter

でした。
今でこそ、高分子でゆっくりした動きを見ている私ですが、
助教時代は今回の受賞テーマに近い分野にいました。
ということで、何か書こうと思いました。

この分野に関する真面目なまとめは
ノーベル賞のオフィシャルサイト
にしっかりと書かれているので、
私の思う受賞テーマの内容を少し書きたいと思います。
わかりやすさのために正確性を犠牲にしている部分もありますが、
正確でない!とわかる人はこの記事を読む必要のないレベルに達している方です。

今回の受賞内容は、「アト秒のレーザーパルスを実験的に作りました、すごい」ということです。

まずレーザーパルスについて。
レーザーには、定常発振レーザーとパルスレーザーの2種類があります。
普通に生きていて出くわすレーザーは、大体定常発振レーザーです。
レーザーポインターなどはこの類です。
特徴は、光がずっと出続けているということです。
これに対しパルスレーザーは、光が瞬間的に出ています。
どれくらい瞬間的か(パルス幅と呼ばれます)というと、パルスレーザーの種類によってとっても違います。
パルスレーザーが発明された頃のパルス幅は、数ナノ秒でした。
1ナノ秒は、0.000000001秒(1×10−9 s)です。
とっても短いですね、という感じですが、
今回の受賞理由となったレーザーのパルス幅は 100アト秒くらいです。
1アト秒は、0.000000000000000001秒(1×10−18 s)です。
1ナノ秒を1秒とした時の1ナノ秒が1アト秒です。
すごいすごい短い。

さて、短いパルス幅のレーザーパルスを作って何が嬉しいかということですが、
私の思う一番は、世界最短って格好いいということです。

これ以上理由(なんの役に立つのか)を聞くのは野暮だと思いますが、
科学の世界での重要性という観点で言うと、超高速現象の解析にとって強力な武器になります。
早く動いている物体を写真に収めようと思っても、ブレてしまいます。
カメラの方で頑張れることとしては、シャッタースピードを上げるということになりますが、
機械的な限界があります。
そこで行われている方法は、一瞬だけ光を当てて、
光が当たっている瞬間だけを撮影すると言う方法です。
最近あまり見ない気がしますが、ストロボ撮影です。
この方法だと、光が当たっている瞬間だけ見られるので、
光が当たっている間に物体が止まって見えれば、綺麗に撮影できます。
ということで、素早く動くものを撮るために、
パルス幅を短くすればするほど嬉しい、ということになります。
化学の分野だと、分子が回転する時間がピコ秒くらい、
分子が振動する時間がフェムト秒くらい
電子雲の変形する時間がアト秒くらいです。
一部繰り返しになりますが、
0.001秒が1ミリ秒(1×10−3 s)、
0.000001秒が1マイクロ秒(1×10−6 s)、
0.000000001秒が1ナノ秒(1×10−9 s)、
0.000000000001秒が1ピコ秒(1×10−12 s)、
0.000000000000001秒が1フェムト秒(1×10−15 s)、
0.000000000000000001秒が1アト秒(1×10−18 s)です。
ということで、アト秒のパルスを作れると、分子中の電子の動きまで見えるということになります。
(実際は写真で撮るという感じではないので、あくまでイメージです)

では、そんなパルスをどうやって作るんですかということです。
教科書的なレーザーの長所に、単色性があります。
光はいろいろな波長を持っていますが、
レーザーは単一の波長を持っているというのが特徴です。
ですが、単一の波長のレーザーを頑張って短くしようとしても原理的に無理ということがわかっています。
(不確定性原理と呼ばれています)
ということで、パルス幅が短いレーザーは、幅広い範囲の波長のレーザー光を重ね合わせています。
不思議な感じがしますが、様々な波長の定常発振レーザーをうまく重ねると、
パルス幅の短いパルスレーザーに変身してくれます。
この考えを基に、パルス幅がフェムト秒程度のパルスレーザーは広く使われています(高いけど)。
基本的にはこの方向で頑張れば、いくらでもパルス幅を短くすることができます。
といっても、一つ問題があります。
光が1フェムト秒で進む長さは、300 nmです。
光の波長と同じくらいです。
ということで、パルス幅が1フェムト秒くらいまで短くなると、
パルス幅の中で光の波としての振動が終わらないくらいになってしまい、
そもそも何を見ているのかわからなくなってしまいます。

ここまで、何も言わずにレーザー光は可視光ですみたいな顔をしてきましたが、
可視光よりもっと短い紫外線やX線も光です。
ということで、幅広い波長範囲のX線を重ね合わせれば、
しっかりと定義できるアト秒のパルス幅を持ったレーザーが作れるでしょう
、ということになります。
ここまでの話は理論的には至極真っ当なんですが、
「幅広い波長範囲のX線」なんて用意するのは無理だよね、というのが一昔前の常識でした。
が、めっちゃ強い(可視〜近赤外の)パルスレーザーを希ガスに集光すると、
幅広い波長範囲のX線が出てくるということが発見されました。
これが1988年で、この現象は高次高調波と呼ばれています。
この発見に続いて、なんでこんなことが起きるのかという理論が確立し、
実際にアト秒パルスが2001年に観測されました。
今回受賞された3名は、私でも知っているくらい有名で、
この分野で重要な功績を挙げた方々です。

「こんなこと言っといて、この受賞予測してたんか」という声が聞こえてきますが、
私がこの分野に入りたての(2015年)頃は、アト秒でノーベル賞出るかなぁと思っていました。
1999年のノーベル化学賞の受賞内容は、
フェムト秒レーザーを駆使した化学反応の追跡でした。
ということで、桁違いに短いアト秒が確立されてきたし、アト秒もノーベル賞出るかなと思っていました。
ですが、まだアト秒は早いんじゃない?という人が多かった印象です。
そんな中、2018年に「超高出力・超短パルスレーザーの生成方法の開発」でノーベル物理学賞が出ました。
上述した「めっちゃ強い(可視〜近赤外の)パルスレーザー」を作ったことが受賞内容です。
ということで、アト秒がノーベル賞として評価されるのはまだまだ先だろうなと思っていました。
…というのが長い言い訳です。

最後に重要なことを述べて終わりにします。
高次高調波の理論やアト秒パルスの応用例について知りたい方は、
分担執筆という形で製作に携わった書籍、
強光子場分子科学
をぜひご覧ください。
(アト秒に関する箇所の執筆は、基本的に私ではないです。)

2023.9.12 分子科学会奨励賞受賞

廣井が第16回(2023年度)分子科学会奨励賞を受賞しました。
受賞題目は「非弾性散乱法を利用したゆらぎ計測による構造化学」です。
東大助教時代のレーザーアシステッド電子衝撃イオン化に関する研究、
及び物材機構時代の動的ラマン散乱の研究を総合的に評価していただいたと考えております。
選考委員の先生方、および私の研究を支えてくださった先生方に厚く御礼申し上げます。
来年度の分子科学討論会において受賞講演を行う予定です。

2023.8.7 動的光散乱装置の立ち上げ

前期の授業が終わる少し前に、必要な実験器具の搬入を完了しました。
これから分光装置も立ち上げたいと思っていますが、
まずは研究室の代名詞としたい動的光散乱装置を立ち上げました。
これからいっぱい実験をしていきたいと思います。

First DLS

芝浦工大で初めて取った動的光散乱の測定結果(散乱光強度の時間相関関数)。
試料は直径120 nmの単分散ポリスチレンナノ粒子。
角セル(Bulk)では0.001 %, 顕微鏡(Microscope)では1 %の濃度で測定。
測定時間は100秒(10秒でも問題なく取れるが)。
顕微鏡で測定すると、被照射体積が小さいためにcoherence factorがほぼ1になってキレイ。
真っ当に指数関数的減衰を示した。

バルクDLS
角セル用の動的光散乱装置。 レーザーの軌跡が綺麗に撮れているのは、空気が汚れている証拠…?

顕微DLS
顕微動的光散乱装置。 撮影のためレーザーパワーを上げていますが、標準物質ならば1 mWなくても余裕で取れます。

2023.6.19 実験室をカラカラにしたい

実験装置を立ち上げるにあたって、部屋の環境整備をしています。
実験室は1階なのですが、入るだけでジメジメしていました。
これではレーザーや光学素子がかわいそう(虫も出そう)ということで、ドライボックス(HP-102EX)と除湿器(OL20-D033A)を導入しました。
除湿器は頑張ってくれている(水は溜まっている)のですが、どうにもジメジメが抜けないということで、モニタリングしました。
この頃は雨も降りだし、普通に湿度が70%を超えてきました。
どうしようか悩んだ末、業務用除湿器(DM-15)を追加で導入しました。
湿度調整機能はなく、ただひたすら湿度を下げるというプロ仕様です。
この子はとっても頑張り屋さんで、湿度50%くらいまで下げられました。
レビューで「爆音でうるさい!」みたいな声も聞こえたんですが、実験室に置く分には全く気にならなかったです。
部屋の空気を雑巾みたいに絞ってくれてる感じで気持ち良いです。
一日以上回すとタンクが満タンになるので(15 Lもあるのに…)、これから自動排水に切り替えます。

湿度と温度の変化
実験室3101の湿度と温度の変化。DM-15の効果を実感。

DM-15
DM-15。かわいい。

2023.5.20 論文掲載

動的ラマン散乱に関する論文が The Journal of Physical Chemistry Cに掲載されました。
物質・材料研究機構のICYS研究員として行った3年間の集大成となる論文です。
また、本論文はThe Journal of Physical Chemistry virtual special issue “Hiro-o Hamaguchi Festschrift”の一部としても掲載されます。
Festschriftの発音も分からないですが、これは東京大学名誉教授で、私が学部4年時の研究室の教授である濵口 宏夫 教授の業績を称えるための論文集です。
1年のみの在籍である最後の卒業生なのですが、このような形で少しは科学者として成長した姿を発信できたことを嬉しく思います。
加えて、提出したCGをSupplementary coverとして選出していただきました。
物質・材料研究機構在籍時に、多くの同僚がとてもきれいなCGを使っていて、調べたところBlenderを使っていました。
今までillustrator一本で勝負していたのですが、自分の絵にillustratorのマンネリ感が出てきたところだったので、少し勉強して見たら、Cover Pictureが作れるようになりました。
いつか表紙を飾れるように頑張ります。
でもBlenderを半年くらい使っていなかったら、大分使い方が抜けていて焦っています。

【以下、専門的な話】
実は構想からは9年で、修論発表の時に「ラマン散乱の強度揺らぎを測定すれば分子選択的に動的光散乱(拡散係数測定)ができます」と言っていました。
ただ、世の中そんなに甘くなく、ラマン散乱はインコヒーレントな散乱光なので、散乱光の干渉現象である動的光散乱には適用できませんでした。
ということで、コヒーレントなラマン散乱であるCARSを使えばよいと考えましたが、CARSと言えば位相整合条件を満たした方向にきれいに発する光として知られており、 この場合は粒子ゆらぎの影響は消えます。
加えて、 CARSの強度揺らぎ測定というのはすでに行われている ということを多くの方からご指摘いただき、「あぁ、このテーマでICYS研究員に採択いただいたのに終わったな」と自分の不勉強を嘆いたことを覚えています。
ただ、先行研究をしっかり確認してみると、実験的に示されていたのは干渉を利用した拡散係数測定ではなく、数揺らぎを利用した計測でした。
これは蛍光相関分光法の考えであり、動的光散乱とは明確に異なる部分でした。
ということで、動的光散乱の文脈で新奇性を打ち出せると信じて研究を進めていきました。
結果として、位相整合を満たさないCARS光の強度揺らぎから拡散係数が求まるということを、理論・実験両面から示しました。

2023.5.8 Webサイト立ち上げ

Webサイトを立ち上げました。
自分の研究室を持つことがあったら、Webサイトは自分で作ろうと考えていました。
これからオシャレなサイトにしていきたいと思う半面、没個性的な感じにはならないように尖らせていきたいとも思っています。

もし何かご意見や誤植があれば、お気軽にご連絡ください。なお、ここでクリック・タップは絶対にしないでください。

2023.4.1 着任

廣井が芝浦工業大学に着任しました。
新しい研究室を立ち上げ、新しい科学を開けるように努力いたします。
初年度は学部生4名が配属されました。
よろしくお願いいたします。